自律と再編集
Autonomy | Re-edit
記号のように寡黙な存在の内に秘めた意思。建築を学んだバックグラウンドを持つデザイナー 松岡孟志による構造への興味が、ジュエリーという小さな世界に映し出される。
独立した個(Autonomy)の強さ、相互作用が与えるリズム、ミニマルに表現する複雑性……デザイナーの思考を巡り、構築されるジュエリー。普遍的な存在感を放ちながら、細部に確かなオリジナリティへの意思を込めていく。
ISIR イズィール。その名は、特別な意味を伝えない。コレクションにもタイトルを冠さず、目印にアルファベット記号を置くのみ。デザイナーの情熱や思考だけが表に立つのではなく、身につけた人の感覚に委ねる余白のあるジュエリーを目指す、ISIRとしてのアティテュード。
身につけた人の感覚に届くフィット感を追求。鏡面に磨き上げたシルバーのなめらかなタッチ。リングの内側のやわらかなフォルムと触感。ブレスレットの、肌に垂れる重み。
身体と構造の接点のつくり方。細部への探求。
新しい構造への挑戦や、全てオリジナル設計の仕様を実現するには、ともに開発を進める職人の経験と知識、制作への情熱が欠かせない。開発パートナーとの信頼関係の積み重ねこそ、ブランドの継続につながる。
一過性で終わらない普遍性と、いつまでも手元に置きたいオリジナリティ。アフターケアも丁寧に行いながら、点ではなく長い線を描く顧客との関係性を目指す。レディメイドに加え、限定的にオーダーメイドの対話を行い、コミュニケーションを深めている。
「建築的思考から大きな影響を受けた私は、次世代を視野に入れた設計や持続可能性に魅力を感じ、建築設計の世界から学んだ、一定の法規のもとデザインの可能性を開いていく行動や、職人間の分野を超えた連携、あるいは信頼の構築といったデザインプロセスを、ジュエリーブランドの継続に置き換えて捉えています。
手のひらに収まる小さな世界という制限の中、どのように思考を込め、普遍的なデザインに新しさを持ち込むか。その上で、テンポラリーではないブランドとなるか。新たな問題提起/発想の実現に、幾度となくトライアンドエラーを繰り返し獲得する価値は、私たちに経験の蓄積をもたらし、レガシーとしてブランドを強固なものにしてくれると信じています。信頼を置く職人たちとともに、適切な労働環境を整えながら技術の蓄積と継承を進め、私たちのブランドを強く持続的な存在にしていきたい。そしてお客様に対しても、長期的に責任を持ちながら、関係性を深めていきたいと考えています」
ISIR 松岡孟志